バリ島の日本人旅行者が減少しているのはなぜなんだろうか?
テロや火山噴火のせいと言われているけど、本当はどうなんだろうか?
バリ島を訪れる日本人旅行者は1990年から2000年にかけて、右肩上がりで上昇していました。
しかし、2000年を超えたあたりから増加に陰りが見え、2010年以降は減少しているのです。
私は2008年からずっとバリ島に暮らしており、旅行者時代を含めると16年以上バリ島と関わってきました。
また、現地旅行会社で働いていた経験もあり、一般の方に比べ旅行業界の知識があると思います。
こんな私が、バリ島の状況とJTB総研が発表している旅行白書を基に、日本人観光客の減少理由を検討しました。
私が考える減少の理由は以下の3つです。
- 直行便の廃止
- ライバル国の台頭
- 日本人の旅行スタイルの変化
今回のブログでは、この現象の理由についてさらに深堀をしていきたいと思います。
この記事を読んで頂ければ、なぜバリ島の日本人旅行者が減少したのか、その理由がわかると思います。
その事により、今後どのようなエリアが人気になってくるのかも予想できるでしょう。
それでは、バリ島日本人旅行者減少の3つの理由、最後までご覧ください。
目次
バリ島直行便の廃止
まずはこちらのグラフをご覧ください。
このグラフは2000年からの日本人の海外渡航者数と、バリ島の日本人来島者数を年単位でグラフ化したものです。
グラフを見やすくするために日本人渡航者数とバリ島来島者数は縦軸のレンジを変えていますので、ご注意ください。
2000年から2010年にかけて、日本人の海外渡航者数推移と、バリ島来島者数の推移が比例しているのが判っていただけると思います。
2001年の同時多発テロや2008年のリーマンショックなどにより、日本人の海外渡航者数は上がったり、下がったりしており、それにつれてバリ島来島者数も上下していますよね。
つまり、この間は世界的な事情によりバリ島の日本人観光客が増減しているのです。
しかし、2009年以降、海外渡航者は増えているのに、バリ島来島者は減っています。
2011年からバリ島来島者は増加していますが、それは海外渡航者の増え方より明らかに鈍くなっています。
2009年にバリ島に何かが起こったんですね。
それは、JALの日本~バリ島直行便が廃止されたのです。
JAL便の廃止により、バリ島直行便はガルーダ・インドネシア航空だけとなりました。
そして、飛行機運賃が値上がりし、バリ島への客足が減少したのですね。
この後、Air Asiaが東京~バリ島直行便の運航を開始したのをご存知の方も多いでしょう。
この時は、来島者数も増え、ガルーダの料金も安くなったんです。
しかし、1年もたたずにAir Asia直行便は廃止となり、また日本人旅行者数は減少となったのです。
ライバル国の台頭
しかし、直行便が無くなったくらいで、そんなに旅行者が減ってしまうのでしょうか?
じつは、まだほかにも理由があります。
それが、ライバル国の台頭です。
こちらのグラフをご覧ください。
こちらは、バリ島を含む東南アジア7カ国の日本人旅行者数を年単位でプロットしたグラフです。
バリ島はインドネシアの小さな島。
それに対し他の国は、1国すべての旅行者数ですので、絶対数でバリ島が負けてしまうのは当然です。
ここでは、絶対数より、旅行者数の上下変動を見てください。
前章で述べた通り、2009年よりバリ島の日本人旅行者は減少しています。
2011年から上昇はしていますが、その伸びは鈍いです。
それに比べ、台湾、タイ王国、ベトナムの伸びは目を見張るものがあります。
特に2009年からのベトナムへの旅行者数増加はすごいものがありますね。
これら国々の最大の特徴は、日本からの移動時間が短いという事です。
- 東京~台湾 約4時間
- 東京~ベトナム 約5.5時間
- 東京~タイ王国 約6時間
- 東京~バリ島 約7.5時間
このようにバリ島に比べ移動時間が短いエリアの旅行者数が伸びています。
ちなみに、もっと移動距離が短いのは中国、韓国ですが、旅行者数は減少しているんです。
その理由は、説明しなくてもわかっていただけるでしょう。
日本人の旅行スタイルの変化
バリ島への直行便が少なくなったのと、ライバル国の台頭が減少の理由というのは、理解できたでしょうか?
でも、そんな事だけで旅行者は減ってしまうのか?
そんな疑問があると思います。
実は上記2つの理由に、もう一つ大きな理由が加わってバリ島の日本人旅行者が減ってしまったのです。
その理由とは、『日本人の旅行スタイルの変化』です。
どのような変化か?というと
『せっかく行くのだから、なるべく長く滞在する』
というスタイルから
『なるべく短い期間で安く旅行を楽しむ』
というスタイルへの変化です。
10年くらい前までは、バリ島の日本人旅行者は平均で4泊6日~5泊7日での滞在を楽しんでいました。
しかし、2009年ごろから滞在日数が短くなり、現在は2泊4日~3泊5日と短くなっています。
1回の海外旅行に掛けられる日数が減ってきたのですね。
そうなると、移動時間が長いエリアは嫌われます。
バリ島の場合はガルーダの直行便を使っても、1日は移動でほぼつぶれてしまいます。
また帰国も夜立ち、朝着ですので、帰国後もお休みを取ることになります。
5日間のお休みをとっても、実質バリ島で遊べるのは3日間となります。
それに対し台湾は、移動時間4時間ですので、移動日も半日遊ぶことができます。
帰国日も、ほぼ一日遊べますよね。
3連休ならば3日間遊ぶことができます。
なぜ旅行日数が減っているのか?
・長期の休みが取れない、取りにくい
・雇用の不安がある
・実質使えるお金が減少している
このような事だと推測できます。
まとめますと
- 長引く不景気のため、1回の旅行あたりに日数が減少
- 短い日数で楽しむ為に移動時間の短い行き先が好まれる
- 結果距離も遠く、直行便も少ないバリ島は敬遠される
という事が言えるでしょう。
バリ島は旅行者に対し優しくないから
以前、ブログでバリ島旅行者減少の話題を書いたとき、バリ島は旅行者に対し優しくないから日本人旅行者が減ってしまうのだ、というご意見を頂きました。
何が優しくないのかを具体的に言うと
・街中でボッタクリにあった
・詐欺的なことで騙された
・税関で言いがかりをつけられ、わいろを取られた
このように、おもてなしの心がないから旅行者が減ってしまうのだ!というご意見です。
確かに、ご意見には一理あります。
トラブルを体験したら、もう二度と来るものか!と考えるのも当然ですよね。
しかし、こんなことが原因で旅行者が半減することは考えられません。
その理由は
- トラブル事例は、まれなケースと思われているから
- 自分事ではないから
- 大きな被害ではないから
トラブル事例はまれなケース
バリ島でのボッタクリや詐欺話は、確かにあります。
ネットや体験記、ガイドブックにも注意するように出ていますし、領事館からの注意も出ていたことがあります。
しかし、このようなトラブルは、多いかというとそうとは言えません。
これまでに新聞や大手雑誌、テレビなどのマスコミで報道されたことはありませんよね。
旅行時の注意事項として話が出たことはありますが、あくまで気を付けてくださいね、レベルですよね。
大々的にテレビ等のマスコミで発表され、行かない方がいいという事になったら、旅行者数に影響は出るでしょう。
実際に被害にあわれた方は、この経験を活かしたい、という気持ちがあるかとは思います。
しかし受け取り側は、注意喚起程度にしかとらえられず、旅行者の数が半減するという所まではいかないですね。
自分事でないから
ぼられた、騙されたという話の聞き手側は自分事として捉えないでしょう。
きっと、危ないところに行ったのではないか?
せこく、値切ったからではないのか?
変なものを持ち込もうとしたからではないのか?
トラブルにあったのは、その人にも責任があり、自分にはそんなことは起きない。
といったことから、トラブル話を聞いてもバリ島に行くのはやめようという人は、本当に少数になるでしょう。
話を信じないという事ではありません。
確かに、そのような事にあったかもしれないけど、自分には関係ない。
と、考えてしまうという事です。
大きな被害ではないから
例えば、火山噴火なら、飛行機が飛ばなくて帰国できなくなるかもしれません。
地震なら建物の倒壊に巻き込まれて生き埋めになる事も考えられます。
テロ事件なら、現場近くに居たら死んでしまう事も考えられる。
自然災害やテロ事件などは、バリ島内にいるだけで被害にあう可能性もあるし、防ぐ手立ても少ない。
また、被害にあったときの損害も大きなものになります。
しかし、ボッタクリや詐欺などは、気を付ければ防げることです。
また、万一被害にあってもお金を取られるだけで、命まで取られることはありません。
大きな被害でないから、気にはしていても、そのために旅行を控えると考える人は少ないですね。
バリ島でのぼったくり、詐欺などは実際のところ、発生していますし、被害にあわれた方もいます。
しかし、このことで、観光客数が半減するというほど影響力は無いと思われます。
ということで、今回はバリ島の日本人観光客が減少した理由について考えてみました。
台湾やベトナムに比べ距離も移動時間も移動にかかる費用もバリ島は大変不利な状況にあります。
しかし、その不利な状況も跳ね返せるほどの魅力がバリ島にあることを信じて、今後も頑張って情報発信をしていきます。
コメント
参考になりました。ありがとうございました。
こちらこそ、お読みいただき、本当にありがとうございました